論文は2017年に書かれたものらしい(著者は河野将佳氏ら四人、東北大)。発行誌などの詳細は分からない。ネットの検索で出てくるはずだ。タイトルは「小型クアッドロータ機のロータ軸間距離と地面効果の関係の検証」というものだ。
自作ドローンにかかわる、この間の様々な 不思議な動きの理由をしっかりと与えるものになっていて、驚いた。
高度が極めて低い状態では、ドローンロータの下降気流が地面にあたることによって、上空よりも大きな推力が出て、結果的に、機体が不安定になることが分析の前提となっている。
11インチロータのクアッドコプターを実質の小さな領域で、最大許容高度60センチで飛ばしていた時、垂直離陸を妨げる、考えられる、あらゆる要因(ロータの回転のバラツキ、重心の偏り、機体のゆがみなどなど)を取り除いても垂直離陸しないときがあった。それでもう事実上お手上げとなった。
ところが、方向性を変えてもっと広い場所で飛ばそうとなって、差し当たって、S工務店が使わせてくれた屋内スペース(2.5m四方、高さくらい)で、自室よりも余裕を持たせて飛ばしたら、1メータを超える高度でも結構案て飛ぶようになった。
それでも、バッテリーのパワーが低下して、高度が稼げないときには予想外の離陸になった。
論文に、次のような Cheesemanさん等 の地面効果の式が引用されている。これはヘリコプターのような単独ロータの場合の地面効果を表している。ここで、$R$は、ロータの半径、$h$は高度、$T$は地面効果が含まれた推力、$T_{out}$は、それがない状態での水力である。
$$\frac{T}{T_{out}}=\frac{1}{1-(R/4h)^{2}}$$
この式に、数値(ロータ半径$=11/2$インチ)を入れて図を描くと次のようになる。
ロータ高度が20センチを切るあたりから、地面効果が加速度的に現れてくる。
私のドローンの離陸前のロータ高度はほぼ20センチだから、ぎりぎり影響を回避しているように見える。しかし、あくまでこれは単独ロータの場合の結果で、河野氏らの論文では、クワッドロータの場合は、ロータ間の距離が近い場合はより大きな地面効果が表れるとしている。
そして、論文では、クアッドコプターでは、$h/R=3.0$以下では、地面効果が顕著になるので、足の長さ($L$)をロータ直径の1.5倍くらいにすることを提案している。この数値は、私のドローンの場合、$L$を42㎝にすることを意味している。現在の2倍の長さということになる。
2倍にすることは足の構造上難しいが、さっそく30センチくらいの高さまではあげようと思っている。
少し立ち止まって、地面効果について考えてみる。
(1)ドローンの上昇あるいは高度の維持は、回転するプロペラの上部の気圧と、下部の気圧の差によって実現する。地面効果がなければ、つまり上空では、確実に実現するのは、下部よりも上部の気圧の薄さだと思う。したがって、プロペラは釣りあげられるようになるのだろう。
しかし、低空で、地面効果が強いと、下から押し上げられる力が強くなる。これは、おそらく吊り上げられるより、方向性を欠いた力になりがちなのだと思う。下から吹き上げられた風に舞う落ち葉のようなものだ。だから、ドローンの安定性を相対的に損なう結果になる。
(2)私のドローンは、必ずプロペラガードを持っている。しかも、プロペラの回転の円形を外側から覆うようなガードだ。これは、一面では、下部に吹き付ける風の方向性を与えるようだが、複数のロータの相互作用はなくならない。
このようなプロペラガードによって、地面効果はより強くなるような気がする。