2022年5月29日日曜日

プロペラ回転の遅延とモーターの機械的時定数

この間、ESCからの信号に対してモーターの回転が遅延する問題をめぐって、面倒なシミュレーションを何度も繰り返してきた。私の自作ドローンの場合200msくらいの遅延がある。ただし、ドローンを剛体として組み立てたモデルでは、この遅延はPID制御で致命的なものにはならない感じになり、やや関心が薄れてしまった。

ところで、最近図書館から「現代制御工学--基礎から応用へ」(江上正、土谷武士共著、2017年刊)という本を借りてきて読んでいたら、とても面白い。結局古本をAmazonで購入した。その初めの方で、DCモーターの「機械的時定数」について書いてあって、これがまさに自分が問題にしていた遅延の基本的内容であることに気づいて、強い感銘を受けたので、ここに記録しておくことにした。

 モーターは内部抵抗とコイルからなる電気システムとコイルとローターの回転という機械システムから成立しているとみる。

機械システムの方から見ると、1軸固定の剛体の運動方程式(角運動量の微分はそのトルクの和に等しい)から入る。先のシミュレーションでも使っているので、そちらの記事が少しは参考になるかもしれない。

$$J\frac{d\omega(t)}{dt}+B\omega(t)=Ki_(t)-T_{L}(t)$$

$\omega$はローターの角速度、$J$はローターの慣性モーメント、$i_{t}$はローターコイルを流れる電流で$K$はそれをトルクに変換する定数、$T_{L}$は負荷トルクである。

(書きかけ)

クアッドコプターの地面効果に関する論文を読む

 論文は2017年に書かれたものらしい(著者は河野将佳氏ら四人、東北大)。発行誌などの詳細は分からない。ネットの検索で出てくるはずだ。タイトルは「小型クアッドロータ機のロータ軸間距離と地面効果の関係の検証」というものだ。

自作ドローンにかかわる、この間の様々な 不思議な動きの理由をしっかりと与えるものになっていて、驚いた。

 高度が極めて低い状態では、ドローンロータの下降気流が地面にあたることによって、上空よりも大きな推力が出て、結果的に、機体が不安定になることが分析の前提となっている。

11インチロータのクアッドコプターを実質の小さな領域で、最大許容高度60センチで飛ばしていた時、垂直離陸を妨げる、考えられる、あらゆる要因(ロータの回転のバラツキ、重心の偏り、機体のゆがみなどなど)を取り除いても垂直離陸しないときがあった。それでもう事実上お手上げとなった。

 ところが、方向性を変えてもっと広い場所で飛ばそうとなって、差し当たって、S工務店が使わせてくれた屋内スペース(2.5m四方、高さくらい)で、自室よりも余裕を持たせて飛ばしたら、1メータを超える高度でも結構案て飛ぶようになった。

それでも、バッテリーのパワーが低下して、高度が稼げないときには予想外の離陸になった。

論文に、次のような Cheesemanさん等 の地面効果の式が引用されている。これはヘリコプターのような単独ロータの場合の地面効果を表している。ここで、$R$は、ロータの半径、$h$は高度、$T$は地面効果が含まれた推力、$T_{out}$は、それがない状態での水力である。

$$\frac{T}{T_{out}}=\frac{1}{1-(R/4h)^{2}}$$

この式に、数値(ロータ半径$=11/2$インチ)を入れて図を描くと次のようになる。

ロータ高度が20センチを切るあたりから、地面効果が加速度的に現れてくる。

私のドローンの離陸前のロータ高度はほぼ20センチだから、ぎりぎり影響を回避しているように見える。しかし、あくまでこれは単独ロータの場合の結果で、河野氏らの論文では、クワッドロータの場合は、ロータ間の距離が近い場合はより大きな地面効果が表れるとしている。

そして、論文では、クアッドコプターでは、$h/R=3.0$以下では、地面効果が顕著になるので、足の長さ($L$)をロータ直径の1.5倍くらいにすることを提案している。この数値は、私のドローンの場合、$L$を42㎝にすることを意味している。現在の2倍の長さということになる。

2倍にすることは足の構造上難しいが、さっそく30センチくらいの高さまではあげようと思っている。

少し立ち止まって、地面効果について考えてみる。

(1)ドローンの上昇あるいは高度の維持は、回転するプロペラの上部の気圧と、下部の気圧の差によって実現する。地面効果がなければ、つまり上空では、確実に実現するのは、下部よりも上部の気圧の薄さだと思う。したがって、プロペラは釣りあげられるようになるのだろう。

しかし、低空で、地面効果が強いと、下から押し上げられる力が強くなる。これは、おそらく吊り上げられるより、方向性を欠いた力になりがちなのだと思う。下から吹き上げられた風に舞う落ち葉のようなものだ。だから、ドローンの安定性を相対的に損なう結果になる。 

(2)私のドローンは、必ずプロペラガードを持っている。しかも、プロペラの回転の円形を外側から覆うようなガードだ。これは、一面では、下部に吹き付ける風の方向性を与えるようだが、複数のロータの相互作用はなくならない。

このようなプロペラガードによって、地面効果はより強くなるような気がする。

920MHz帯無線通信モジュールTY92SS-E2730を使う

 先にも書いたが、ドローン2号機上のコントローラーはラズパイ4で、それとのやりとりをもともとWIFI経由で予定していたが、機体がアルミパイプであるために通信が不安定で使い物にならなかった。そこで、プロポに変えた。プロポの信号取り出しもなんとか安定できるようになったが、そのシステム...