2025年5月30日金曜日

プロペラ回転面の方向を直接変化させ機体を安定させる

 複数プロペラドローンの機体の安定は、PID制御などによってプロペラ相互の回転速度を変化させることで実現してきた。ここでは、回転速度は一定のまま、プロペラの回転面の方向を変えることによって実現できないかを少し考えてみたい。

とは言っても、ヘリコプターは、実質回転面を変化させているので、すでになじみの方法なのかもしれない。そこで、まず、プロペラが一個にして状況を単純化しこのことを考えてみたい。

次の図を見ていただきたい。


ここで、OMは、長さLの質量を無視できる房であるとしよう。ドローンの機体を抽象化したものだ。機体は、位置が固定しているO点を支点として回転するのみである。Mにモーターとプロペラがありがあり、プロペラの回転面はMを支点に自由に動かすことができるとして、その回転面は直線PQで表されている。プロペラの回転面は、機体に対して垂直な状態が基準である。機体OMは垂直に立っている状態が基準となる。そこからの機体の傾きを図の$\theta$ で表される。また、機体のプロペラ面の基準状態からの傾きは、$\varphi$で表されている。

機体の質量は点Mに全て代表して存在し$m$で表される。重力加速度をgとしよう。M点の運動方程式を考える。プロペラの回転数は一定で、そのスロットルは一定の力$T$で表されるとしよう。

また、二つの角度$\varphi$と$\theta$は図の方向が正の方向であるとする。

$mL\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=mg\sin\theta-T\sin\varphi$

となる。今、プロペラ面の角度を制御するスキームとして、次の式を考える。

$\varphi=\delta\theta$

つまり、機体の傾き角度に応じて一定の係数$\delta$をかけてプロペラ面を制御するというものである。このとき、運動方程式にこの式を代入し変形すると、次のようになる。

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=-(\frac{T}{mL}\sin\delta\theta-\frac{g}{L}\sin\theta)$

今$\theta$が微小にのみ変化すると仮定すると、次のように近似できる。

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=-\frac{1}{L}(\frac{T\delta}{m}-g)\theta$

すなわち、$\delta$が右辺の括弧内を正にする大きさであれば、これは単振動になる。逆に小さければ、重力に負けて落下する。

この制御では、機体の傾きを十分補正するようにプロペラ面の傾きを与えれば、機体は一定の揺れを繰り返した状態で定常状態になるわけだ。しかし、それでは安定しているとは言えない。

安定させるためにどうすればいいか考えよう。

傾きの角度に対する微分制御を加えたスキームに変更しよう。すなわち、

$\varphi=\delta\theta+\eta\frac{d\theta}{dt}$

である。運動方程式は、次のように変形できる。

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=-(\frac{T}{mL}\sin(\delta\theta+\eta\frac{d\theta}{dt})-\frac{g}{L}\sin\theta)$


右辺のカッコ内の第1項を三角関数の加法定理を使って変形すると次のようになる。

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=-(\frac{T}{mL}(\sin(\delta\theta)\cos(\eta\frac{d\theta}{dt})+\cos(\delta\theta)\sin(\eta\frac{d\theta}{dt}))-\frac{g}{L}\sin\theta)$

今、$\theta$が微小な範囲でのみ変化するとして、$\sin\beta\sim\beta, \cos\beta\sim 1$という近似を持ちいると、

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}=-(\frac{T}{mL}(\delta\theta+\eta\frac{d\theta}{dt})-\frac{g}{L}\theta)$

単振動にはならないので、二階同次微分方程式の形にしておこう。

$\frac{d^{2}\theta}{dt^{2}}+\frac{\eta T}{mL}\frac{d\theta}{dt}+(\frac{\delta T}{mL}-\frac{g}{L})\theta=0$

この微分方程式は、同次式になっているので解析的に解くことができるが、煩雑かつそれほど必要でもないのでやめておこう。

はっきりしているのは、$\delta$が十分な大きさを持つことを前提にすると、これは簡単に言えば速度に比例した摩擦が発生する錘のついたバネの振動になり、一方的にか、振動しながら元の状態に収束する。つまり、機体を安定させることができるわけである。

結論的に、プロペラ平面を制御する適切なスキームを与えれば、機体を安定させることができる。

プロペラ回転面の方向を直接変化させ機体を安定させる

 複数プロペラドローンの機体の安定は、PID制御などによってプロペラ相互の回転速度を変化させることで実現してきた。ここでは、回転速度は一定のまま、プロペラの回転面の方向を変えることによって実現できないかを少し考えてみたい。 とは言っても、ヘリコプターは、実質回転面を変化させている...